T クラリネット、そして歌。(1)
<2002.9.27>
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私は高一の夏からクラリネットを習い始めた。それまではクラリネット |
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という実物の楽器を見たことも触ったこともなかった。それなのに、
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なぜ興味を持ったのか。それは、あのすばらしい音がたまらなく好き |
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だったからだ。気品があり、まろやかでやさしく、奥深い。そのうえ |
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説得力がある。そんな音にあこがれ、始めたのだが、その音への道は |
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果てしなく遠かった。孤軍奮闘して通ったレッスンも私には、ほろ苦い
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思い出ばかりだ。管楽器は単旋律(メロディー)しか吹けない。だから |
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音が命、音が悪かったらもう話にならない。大学の頃のレッスンの先生は |
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音にはとても厳しかった。音がよくないと何も言ってもらえない。 |
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ただ黙って首を横に振るだけ。そんな時はもうどうしてよいか冷や汗を
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ふくだけ。頭の中は真っ白になってしまった。だから、どうしたら |
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よい音が出るかが最大の課題であった。世界一流のクラリネット名手の
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音は、甘く、切なく、また軽やかで、私の心を振るわせ、夢の世界へ
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誘ってくれた。どうしたらあんな音が出るのだろう・・・。テクニック
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(指を速く動かす)をつけるのなら、スケールやエチュードをひたすら |
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さらえば何とかなる。ただ、音は自分の耳をたよりにその方法を |
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見い出さなければならない。その楽器の最高の音を出すために・・・。 |
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それが管楽器奏者の宿命なのだから。
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私が合唱指導を始めた時、専門的に発声を勉強したことがなかったから、 |
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その方法(発声法)は解らなかった。しかし、自分の中には確かな |
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目標とする声があった。その声に近づけようと、生徒と一緒に声作りを
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暗中模索していった。それは、クラリネットの音作りと同じであった。
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今考えると、固定的な発声法を習わなかったことが、よかったと思っている。
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私の求める幅広い発声法を習得できたから。(続く)
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